プロダクトをつくるということ

2017.04.04 | SOSUKE HIRAYAMA
プロダクトをつくるということ

こんにちは、メドレーの平山です。

このブログをずっと継続して書いていけるのだろうかという不安と戦いつつ、2回目は「プロダクトをつくるということ」について書いていきます。


プロダクトをつくるアプローチ

20161127 大事にしたいこと - esa-pages.io より

自分はプロダクトを作ることが好きだし、作れることに誇りを持っています。デザイナー・エンジニアと言われるひとはプロダクトに対してもっとこだわりをもってほしいと思います。

日本でIT(SIer)とくくられるものが残念な形で語られることが多いのは、顧客ないしは会社からの要望に対して忠実にものをつくっていくことこそが絶対、とされてきたことに由来することが大きいと思います。

しかし、当然のことながら何かをつくるという背景は様々です。大量生産品のコップをつくる、オーダーメイドのスーツを作る、都市をつくる、同じつくることでもアプローチや考え方は全く異なります。

SIerという働き方はオーダーメイドのスーツを作るということに近く、業務を事細かく理解し忠実にお客様の要望をすいあげシステムを作り上げていく。複雑で大きな業務システムを作る中では、開発者が製造要員のようになってしまうことも多いです。他業種で働いてきた人にとってはデザイナー・エンジニアに対してこのようなイメージを持っている人も多いと思います。

一方、インターネットサービスをつくるということは都市をつくることに近いと思っています。駅をつくり、周辺に商業施設をつくる、そこに集まってきた家族をサポートするための公園や学校をつくる、そのような中で人の流れを間接的に誘導していき人の暮らしを作り上げていく。インターネットサービスも同じで、インターネット上にプロダクトをつくりあげそれを利用する人々の行動を新しい方向に誘導させていく、かつ時間軸をふまえ人の流れの変化に合わせてプロダクトを進化させていく、それらの全体をデザインしていくことがプロダクトをつくることと自分は捉えています。

よく新機能を検討するにあたり、あまり使われない機能だけど顧客から声もあるし作ってしまうようなケースがありますが、これはやってはいけないことだと考えています。システム的な負債を作り込んでしまうという面ももちろんありますがそれ以上にそのような機能(場所)を作ってしまうと、使っている人がそこに流れてしまい、結果として好ましくない行動パターンに誘導されてしまうからです。そしてそれを元の意図した流れに戻すのはとてもむずかしいことなのです。

グロース施策についても同じようなことがいえます。意図した都市デザインの中で人の流れを加速するための手段であって、都市デザインの解釈を誤って行うグロース施策は好ましいものではないように思います。

これは社内向けのメッセージとしてesaに書いた文章です。プロダクトをつくるということに対する理解の差によってチーム間にミスコミュニケーションが起きつつあった時に書きました。

ここで書いたようにプロダクトをつくるということには様々な考え方やアプローチの仕方があります。特定の考え方だけが良いというわけではなく、事業のモデル、フェーズにあわせて適切なアプローチをしていくことが大事であると自分は考えています。

例えば、よくありがちなのは現状分析を徹底的に行い、空いてる課題のマス目をひたすら埋めていくというアプローチ。至極まっとうなアプローチですし、プロダクトの型が確立されたフェーズでは正しいアプローチだと思いますが、立ち上げ期にこれをやってしまうとうまくいかない場合があります。

立ち上げ期のプロダクトは変化しながら成長していくものです。特に未知なる領域に攻め込もうとしているプロダクトほどそういった要素が強く、ある時点での課題は3ヶ月後には課題ではなくなっているということもあります。そうならば、マス目を埋めるアプローチではなく、その時点で一番重要となるポイントを見極めて攻めていくことこそが重要になっていきます。プロダクトのフェーズ毎に重要なポイントを見極め、時間軸に応じて攻め方を変えていく。

ここらへんがうまくいかずにプロダクトを離陸させることができなかったケースは意外に多いように思います。

プロダクトをつくるリーダーとチーム

また、プロダクトをリードするいわゆるプロダクトマネージャーの選定も重要です。

初期フェーズの会社であるならば資金が限られている中で結果を出すことが求められるため、注力ポイントの見極めとそれに応じたプロダクトデザイン、そして開発戦略の立案はプロダクトマネージャーの役割として強く求められます。だからこそ、開発について先読みがしやすいエンジニアがプロダクトマネージャーをやるほうが有利に働くと自分は考えています。

どこかの記事でエンジニアはエンジニアリングに因われるから、良いプロダクトをプロデュースができないという意図の記事を読んだ記憶があります。それはプロダクトデザインとエンジニアリングとの思考の切り替えがうまくいっていないだけであって※1、その切替のメソッドが確立したならばエンジニアがプロダクトデザインをすることの優位性は圧倒的に高いと思っています。

加えて、プロダクトをきちんと離陸させた後により速く遠くまで飛ばすための「ギアチェンジ」も重要な要素だと思っています。

事業・プロダクト両方にいえることですが「立ち上げる」ということと「成長させる」ということは違う性格のものだったりもします。だからこそ、立ち上げが得意なひとと、成長させることが得意なひとをうまくバトンタッチさせていくことも、プロダクトを成長させていくための組織運営として大事な考えだと思っています。

メドレーの行動規範には凡事徹底・中央突破・未来志向という3つのバリューがあります。立ち上げの時は中央突破の色が濃い人がプロダクトの型をつくりあげる、そして凡事徹底の色が濃い人がその型をベースに丁寧に磨きあげていく、その全体の流れを通してプロダクトが成長していく。どちらが上というわけではなく、相互が強みをリスペクトしながらうまく役割をシフトしていくことが重要であると思います。

プロダクトをちゃんと離陸させ、その後も安定飛行できるような状態をつくりあげる。その一連の時間軸の流れまで考えられるひとは強いプロダクトマネージャーといえるのかもしれません。

※1: そもそもプロダクトマネージャーとしての素質が低い可能性もある

プロダクトをつくる心構え

事業として顧客に価値を提供するプロダクトはもちろんですが、人事システム、採用管理、営業管理ツール、など社内の人が使うものもプロダクトであり、組織運営においては多くの人がプロダクトと接しています。

そして、そのプロダクトの出来によって利用する人々の生産性の大小が変わってきます。だからこそ、適切にプロダクトをデザインすること、最適なツールを選択することはとても大事なことであると思います。プロダクトをつくるひとは、利用するひとの流れをデザインし、利用するひとやチームの価値を最大化させることにコミットする。その結果、良い流れがつくれた先には、組織の価値も世の中への提供価値も大きく向上する。

そう考えるとプロダクト開発に関わるエンジニアは、様々な場面で大きな価値を生み出せる可能性が非常に高いのです。だからこそつくれることに誇りを持って日々の様々な業務に取り組んでいってほしいと思います。

デザインをする、開発をするという作業は孤独なものだったりします。既に動いているプロダクトのメンテナンスを行いつつ、既存の機能の方向性を踏まえつつ新しい機能を作る、技術的に難易度が高い場合はそれを乗り越え、システム的な負債やセキュリティリスクも考慮しつつ作りあげていく。

プロダクトの思想やシステムの負債、セキュリティリスクなどは、事業KPIという数字には表しづらい部分もあったり、職種の性格上、内にこもってしまい外にうまく発信することが苦手なひとも多く、口のうまい人のいいなりになってしまうというケースもあります。

しかしプロダクトをつくれるということはクリエイターのみが持つ特権です。自分の仕事に誇りをもち、自信をもって積極的に声を大きく発信していって欲しいと思います。

「Love What You Make」
https://vimeo.com/24940735

さいごに

ということで、メドレーでは「プロダクトをつくるひと」を絶賛募集しています。興味あるかたはぜひご連絡ください!

本コンテンツは、筆者が株式会社メドレー在籍時に執筆したものです。知的財産権は平山宗介個人に帰属します。